この記事で扱う課題
シングルスでは、安定性を優先するショットと、相手を崩しにいく攻撃的なショットがあります。
前へ打つなら少し長め、後ろへ打つなら高く深くする方が、ラリーは安定しやすくなります。
ただ、実戦ではそれだけでは足りません。
同じ場所から打つ場合でも、相手がどのようなショットを打ってきたかによって、自分が選べるショットは変わります。
相手の球が甘ければ攻撃性を高められますが、低い位置や身体の後ろで触る場合に無理をすると、ミスやカウンターにつながります。
この記事では、相手のショットに応じて、どこまで攻めるかを判断する基本的な考え方を整理します。
結論
シングルスでは、できるだけ攻撃的なショットでつなげられた方が、相手を崩しやすくなります。
しかし、毎回強く攻めればよいわけではありません。
攻撃的なショットは、成功すれば相手の時間を奪えますが、
- ミスが増えやすい
- 甘くなったときに反撃されやすい
- 同じショットを続けると予測されやすい
という面もあります。
そのため、基本は安定性の高いショットでラリーを作りながら、自分が高く早い打点で触れたときや、相手の体勢が崩れたときに攻撃性を高めます。
また、ショットは「攻めるか、守るか」の二択ではありません。
例えばロブであれば、
- 高く深く上げる
- 少し軌道を低くする
- さらに低く速いアタックロブにする
というように、攻撃性を段階的に変えられます。
状況に応じて、少しだけ攻める選択肢を持つことが大切です。
相手のショットから何を判断するか
ショットを選ぶときは、自分が打ちたい球だけを考えるのではなく、相手の球によって作られた状況を見ます。
特に確認したいのは、次の4つです。
1. どの高さで触れるか
ネットより高い位置で触れれば、速い球や下方向へ向かう球を使いやすくなります。
反対に、ネットより低い位置で触る場合は、無理に短く落としたり、強く押したりするのが難しくなります。
高く触れたときは攻撃性を上げやすく、低い位置で触るときは安定性を優先しやすいと考えます。
2. 身体より前で触れるか
同じ高さでも、身体より前で触る場合と、身体の横や後ろで触る場合では、選べるショットが変わります。
身体の前で余裕を持って触れれば、面を作りやすく、コースや速さも変えやすくなります。
一方、打点が後ろになるほど、細かな面の操作は難しくなります。
そのため、後ろで触るときに無理に短いヘアピンを狙うよりも、長さや高さを確保したショットを選ぶ方が安定します。
3. 自分の体勢が安定しているか
高い位置で触れても、身体が流れていたり、足が止まっていなかったりすれば、攻撃的なショットの精度は落ちます。
攻められるかどうかは、打点の高さだけでは決まりません。
高く、身体の前で、安定した体勢で触れたか
という3つをまとめて判断します。
4. 相手がどこにいるか
自分の打点が良くても、相手がすでにそのコースを待っていれば、簡単には崩せません。
相手が前へ残っていれば、後方へ速く送るショットが有効になります。
反対に、相手が後ろへ戻りすぎていれば、ネット前へ落とす価値が高くなります。
自分の打点と体勢だけでなく、相手の位置や動きも見ながらショットを選びます。
攻撃性は段階的に変える
安定性の高いショットと攻撃的なショットを、完全に分けて考える必要はありません。
同じショットでも、高さ、速さ、長さを少し変えることで、攻撃性を調整できます。
例えばロブなら、
- 高く深く上げてラリーを立て直す
- 少し低めにして相手の準備時間を減らす
- さらに低く速くして相手の後方を突く
という使い分けができます。
ヘアピンでも同じです。
- 少し長めに入れて相手の返球を絞る
- いつもより少し短くして相手を前へ動かす
- 十分に高く触れたときだけ、ネット際へ厳しく落とす
というように、少しずつ攻撃性を変えられます。
毎回最も厳しいショットを狙うのではなく、その状況で成功率を保てる範囲まで攻撃性を上げます。
具体例:長めのヘアピンを打たれた場合
ここからは、相手が長めのヘアピンを打ってきた場面を例に考えます。
相手のヘアピンがネット際へ短く落ちず、少し長く入ってきた場合、自分は前へ出てシャトルを触ります。
一見すると、相手のショットが甘くなったように感じるかもしれません。
しかし、長めのヘアピンには独特の難しさがあります。
長めのヘアピンに短いヘアピンを返しにくい理由
長めのヘアピンは、ネットに近い位置ではなく、少し後ろへ落ちてきます。
そのため、自分の打点もネットから離れやすくなります。
また、シャトルが強く下を向いているわけではなく、比較的横向きに近い状態で触ることになります。
この位置から無理にシャトルを切り、ネット際へ短く落とそうとすると、
- ネットにかかる
- シャトルが浮く
- 相手にネット近くで高く触られる
- 相手に短いヘアピンを打ち返される
- クロスヘアピンで崩される
といったことが起こりやすくなります。
特に相手は、自分よりネットに近い位置で次のヘアピンを触れる可能性があります。
こちらが無理に短く打って少し浮かせると、相手にとっては、質の高いヘアピンやクロスヘアピンを狙いやすい状況になります。
基準にしたいのは長めのヘアピン
長めのヘアピンを打たれたとき、まず基準にしたいのは、こちらも少し長めに返すヘアピンです。
ただ長く返せばよいわけではありません。
ネット付近を低く通しながら、相手に高い位置で触られない長さを狙います。
このショットには、
- 無理に短く狙うよりミスが少ない
- 相手の打点をネットから離せる
- 相手の返球をロブに絞りやすい
- 相手が無理に短く打てば、こちらが前で触りやすい
という利点があります。
まずは長めのヘアピンを安定して打てることが、この場面での基本になります。
長めのヘアピンだけでは相手に読まれる
長めのヘアピンは安定性がありますが、それだけを繰り返すと、相手は前のショットを待ちやすくなります。
そこで、同じ入り方からアタックロブを混ぜます。
相手が長めのヘアピンを打ったあと、ネット前へ残っている場合は、低く速いロブを後方へ送ることで、相手の準備時間を減らせます。
このとき重要なのは、最初からロブを打つと分かるような大きな準備をしないことです。
長めのヘアピンを打つときと同じように入り、ラケット面を早く作ります。
そこから、
- 長めのストレートヘアピン
- ストレートへのアタックロブ
- クロス方向へのアタックロブ
- 状況によって高く深いロブ
を打ち分けます。
なぜアタックロブが有効なのか
相手が長めのヘアピンを打ったあとは、次のヘアピンに備えてネット前へ残る可能性があります。
そこへ同じ構えからアタックロブを打てれば、相手は前から後ろへ素早く動かなければなりません。
相手が少し遅れれば、後方で低い打点から触らせることができます。
後ろで低く触らせられれば、相手は強いショットを打ちにくくなります。
こちらは相手の返球を待ちやすくなり、次のラリーでも有利な位置を取りやすくなります。
ただし、自分の打点が低かったり、体勢が崩れていたりする場合は、無理にアタックロブを狙う必要はありません。
その場合は、高く深いロブを使ってラリーを立て直します。
同じ準備から打ち分ける
長めのヘアピンとアタックロブを使い分けるには、早い段階でラケット面を作ることが重要です。
ヘアピンを打つときはラケットを前に出し、ロブを打つときは大きく後ろへ引くという形では、相手にショットを読まれます。
できるだけ同じ入り方と同じ準備から、最後の短い動作でショットを変えます。
これは、コンパクトに振ることの重要性にもつながります。
準備動作を小さくし、打つ直前まで複数のショットを残せれば、相手は前と後ろのどちらにも備えなければなりません。
ショットそのものの速さだけでなく、相手に予測させないことも攻撃になります。
相手のミスだけでなく、小さな崩れを見る
攻撃性を高めるのは、相手が明らかなミスをしたときだけではありません。
相手の小さな崩れも、攻めるきっかけになります。
例えば、
- ショット後に前へ寄りすぎた
- 後方への戻りが少し遅れた
- 片側の足に体重が残った
- ネット前へ近づきすぎた
- こちらのショットを先に予測して動いた
といった場面です。
相手が完全に崩れていなくても、次の方向へ動きにくい状態であれば、普段より少し攻撃的なショットを選べます。
明らかなチャンスが来るまで待つのではなく、小さな崩れに合わせて少しずつ攻撃性を高めます。
練習で意識すること
この考え方は、同じショットを繰り返すだけでは身につきにくいです。
練習では、同じ場所から複数のショットを選ぶようにします。
例えば、相手役に長めのヘアピンを打ってもらい、
- 長めのヘアピン
- ストレートへのアタックロブ
- クロス方向へのアタックロブ
- 高く深いロブ
を打ち分けます。
最初は打つショットを決めて練習しても構いません。
慣れてきたら、相手の位置を見て選びます。
- 相手が前へ残ったらロブ
- 相手が後ろへ戻ったらヘアピン
- 自分の打点が低ければ高いロブ
- 高く前で触れたら攻撃性を上げる
という判断を加えます。
大切なのは、アタックロブの速さだけを練習することではありません。
相手と自分の状況を見て、ショットの攻撃性を変えることが目的です。
まとめ
シングルスでは、攻撃的なショットを使うほど相手を崩しやすくなります。
ただし、相手のショットや自分の体勢を考えずに攻め続けると、ミスが増え、相手にも予測されやすくなります。
まずは安定性の高いショットを基準にします。
そこから、
- 高く触れたか
- 身体の前で触れたか
- 自分の体勢が安定しているか
- 相手がどこにいるか
を見て、攻撃性を段階的に上げます。
長めのヘアピンを打たれた場合は、無理に短いヘアピンを狙うのではなく、低く長いヘアピンを基準にします。
そこへ、同じ準備からアタックロブを混ぜることで、相手に前後の両方を意識させられます。
「何を打ちたいか」ではなく、「相手の球によって、今どこまで攻められるか」を判断することが、シングルスのショット選択では重要です。