この記事で扱う課題
フットワークというと、足を速く動かすことばかりに目が向きやすいです。
しかし、実際には足の回転だけで速さが決まるわけではありません。
重要なのは、相手が打った瞬間にすぐ動き出せる状態を作ることと、シャトルの位置まで移動したあとに身体の勢いを安定して止めることです。
どれだけ足が速くても、動き出しが遅ければシャトルへ入るのは遅れます。また、速く入れても止まり方が不安定であれば、ショットの精度が落ち、次の戻りも遅くなります。
この記事では、個別の方向への足運びではなく、フットワーク全体に共通する動き出しと止まり方の基本を整理します。
結論
フットワークの基本は、次の2つです。
- 動き出す前にリアクションステップを入れる
- 前へ大きく踏み込むときは、かかと側から入りながら徐々に止まる
リアクションステップでは、相手が打つタイミングに合わせてスタンスを広げ、重心を少し落とします。
そこから、動きたい方向とは反対側の足で床を押すことで、身体を素早く移動させます。
止まるときは、一瞬で急停止しようとするのではありません。かかと側から接地し、膝や股関節を曲げながら、身体の勢いを少しずつ受け止めます。
この2つができると、最初の一歩を出しやすくなり、打点でも身体を安定させやすくなります。
動き出しではリアクションステップを使う
リアクションステップとは、相手がシャトルを打つタイミングに合わせて軽く足を広げ、次の方向へ動き出す準備をする動作です。
一般的にはスプリットステップと呼ばれることもあります。
大切なのは、ただその場で跳ぶことではありません。
着地するタイミングで重心を少し落とし、どの方向にも床を押せる状態を作ることが目的です。
例えば、右方向へ動きたい場合は、左足で床を押すことで身体を右へ移動させます。左方向へ動きたい場合は、その反対です。
動きたい方向と反対側の足を使うことで、身体全体を素早く移動させやすくなります。
リアクションステップがないとどうなるか
リアクションステップが小さすぎたり、ほとんど行われていなかったりすると、足が身体の重心に近い位置へ着きやすくなります。
この状態では、床を横方向へ強く押しにくくなります。
また、重心が高いままだと、動きたい方向へ身体を傾けてから足を出す必要があります。そのため、最初の一歩が遅れやすくなります。
リアクションステップを入れることで、
- スタンスを広げる
- 重心を落とす
- 動きたい方向と反対側の足で床を押す
- 最初の一歩へつなげる
という流れを作れます。
脚力だけで無理に蹴り出すのではなく、落ちてきた重心と床から受ける力を、動き出しに使うことが大切です。
実戦では大きく跳びすぎない
リアクションステップを覚える最初の段階では、動きを大げさにしても構いません。
ほぼ直立した姿勢から軽く上へ跳び、両足を大きく広げて着地すると、重心が落ちる感覚や、反対側の足で床を押す感覚をつかみやすくなります。
ただし、実戦では高く跳ぶことが目的ではありません。
跳びすぎると、空中にいる時間が長くなり、相手が打ったあともすぐ動けません。
練習で動きの仕組みを理解したら、少しずつ跳ぶ高さを小さくし、相手が打つ瞬間に着地できる形へ近づけていきます。
止まるときに大切なのは、急停止しないこと
シャトルへ素早く入るほど、身体には前へ進もうとする勢いが残ります。
この勢いを一瞬で止めようとすると、前脚には大きな負担がかかります。また、強く踏ん張ることに体力を使うため、ショット後の戻りも遅れやすくなります。
そこで大切なのが、接地してから少しずつ止まることです。
足が床に着いた瞬間にすべてを止めるのではなく、膝や股関節を曲げながら、身体の勢いを受け止めます。
少し難しい言い方をすると、同じ勢いを止める場合でも、止まるまでの時間が短いほど、瞬間的に大きな力が必要になります。
反対に、少し長い時間を使って止まれば、必要な力を分散させやすくなります。
フットワークでは、速く入ることと同じくらい、勢いをうまく逃がしながら止まることが重要です。
前への踏み込みでは、かかと側から入る
この記事でいう「かかとから止まる」は、特にネット前などへ大きく踏み込むランジを想定しています。
前方へ踏み込むときは、足を前へ伸ばし、かかと側から接地します。
そこから足裏全体を床につけ、膝と股関節を曲げながら身体の勢いを受け止めます。
流れとしては、次のようになります。
- 足を前へ伸ばす
- かかと側から接地する
- 足裏全体へ体重を移す
- 膝と股関節を曲げながら減速する
- 打点で身体を安定させる
最初から膝が深く曲がった状態で入ると、接地してからさらに曲げられる範囲が小さくなります。
そのため、短い時間の中で勢いを止める必要があり、より強く踏ん張らなければなりません。
足を前へ伸ばした状態から入り、接地後に少しずつ膝を曲げることで、止まるまでの時間を長く取りやすくなります。
なお、横方向や後方へ動く場合は、足裏の使い方が前へのランジと同じとは限りません。すべての方向で必ずかかとから着く、という意味ではありません。
膝の角度は一つの目安として考える
指導では、踏み込んで止まったときの膝の角度を、およそ110度程度の目安として説明することもあります。
ただし、実際の角度は、
- 身長や脚の長さ
- 踏み込む距離
- 動く方向
- 打点の高さ
- 筋力や柔軟性
などによって変わります。
大切なのは、毎回同じ角度を正確に作ることではありません。
膝が伸び切ったまま止まったり、最初から深く曲がりすぎたりせず、接地してから膝と股関節を使って勢いを受け止められることが重要です。
角度は、止まり方を確認する一つの目安として使います。
反対側の足を残すと戻りやすくなる
右利きの選手が右足を前へ踏み込む場合、左足を必要以上に前へ寄せないことも大切です。
右足で身体の勢いを受け止められれば、左足を後ろに残しやすくなります。
左足が後ろに残っていれば、シャトルを打ったあと、その足で床を押してホームポジションへ戻れます。
反対に、止まりきれずに左足まで前へ寄ってしまうと、戻る前に足を置き直さなければなりません。これにより、戻りの一歩目が小さくなりやすくなります。
もちろん、無理に左足を残せばよいわけではありません。
遠いシャトルへ入る場面では、身体を安定させるために反対側の足が動くこともあります。また、筋力や届く範囲には個人差があります。
まずは安定して止まれる範囲で反対側の足を残し、筋力や技術の向上に合わせて、その範囲を少しずつ広げていくことが大切です。
リアクションステップの練習
最初は左右への動きから始めます。
左右への動き出し
- ほぼ直立した状態で構える
- 軽く上へ跳びながら両足を広げる
- 重心を落として着地する
- 指示された方向と反対側の足で床を押す
- 左右どちらかへ一気に動き出す
最初は、リアクションステップを大きく行っても構いません。
動きの速さよりも、
- スタンスが広がっているか
- 重心が落ちているか
- 反対側の足で床を押せているか
- 上半身だけが先に傾いていないか
を確認します。
慣れてきたら、リアクションステップを小さくし、相手役の指示やシャトルの方向に反応して動きます。
6方向への動き出し
左右への動きに慣れたら、前後左右を含む6方向へ広げます。
それぞれの方向で足運びは変わりますが、最初に行うことは同じです。
相手が打つタイミングに合わせて重心を落とし、動きたい方向と反対側の足で床を押してから動き出します。
最初から速さを求めるのではなく、どの方向でも同じ準備から動けることを目標にします。
止まり方にはシャトル置きを使う
止まり方の練習として、シャトル置きは取り組みやすい方法です。
シャトル置きでは、ラケットで打つときよりも低い位置まで身体を下げる必要があります。
そのため、通常のフットワークよりも脚へかかる負荷が大きくなり、止まり方や姿勢の安定を確認しやすくなります。
練習では、次の点を意識します。
- 前への踏み込みでは、かかと側から入る
- 接地後に膝と股関節を曲げる
- 腰だけを丸めてシャトルを置かない
- 上半身が大きく前へ倒れないようにする
- 反対側の足をできるだけ後ろに残す
- シャトルを置いたあとの戻りまで続ける
単に速く往復するだけでは、止まり方が崩れていても気づきにくくなります。
まずは静かに安定して止まり、シャトルを置いたあとに大きな一歩で戻れるかを確認します。
スピードを上げるのは、形を保ったまま動けるようになってからです。
まとめ
フットワークでは、足を速く回すことだけを考えても、効率よく動けるようにはなりません。
動き出しでは、リアクションステップを使ってスタンスを広げ、重心を落とします。そして、動きたい方向とは反対側の足で床を押し、最初の一歩へつなげます。
前へ大きく踏み込んで止まるときは、かかと側から入り、膝や股関節を曲げながら身体の勢いを受け止めます。
一瞬で急停止するのではなく、少しずつ減速できれば、打点で身体を安定させやすくなり、次の戻りにもつなげやすくなります。
動き出しと止まり方が安定すると、同じ脚力でも、より速く、より無駄の少ないフットワークを目指せます。