この記事で扱う課題

「体幹を鍛える」と聞くと、プランクを長い時間続けることを思い浮かべる人が多いと思います。

もちろん、前後から力が加わっても姿勢を保つ力は大切です。

ただ、バドミントンで必要な体幹は、それだけではありません。

スマッシュでは、脚や股関節から生まれた回旋を上半身とラケットへ伝える必要があります。反対に、身体が回りすぎてショットが左右へぶれないように抑える力も必要です。

さらに、前後左右へ素早く動いている最中でも、上半身や骨盤を大きくぶらさずにショットを打たなければなりません。

この記事では、バドミントンにおける体幹の役割と、取り組みやすいトレーニング方法を整理します。

結論

バドミントンで必要な体幹には、大きく3つの役割があります。

  1. 下半身で作った力を上半身とラケットへ伝える
  2. 身体が必要以上に回ることを抑える
  3. 手足を動かしながら、上半身と骨盤を安定させる

つまり、体幹が強いとは、ずっと身体を固めていることではありません。

必要な回旋は使いながら、力が逃げたり、身体がぶれたりしないようにコントロールできることが重要です。

体幹は「身体を固める力」だけではない

一般的なプランクでは、身体が反ったり曲がったりしないように姿勢を保ちます。

これは体幹の基本的な働きの一つです。

しかし、バドミントンでは、止まった姿勢のまま耐える場面ばかりではありません。

実際には、

  • 身体をひねってスマッシュを打つ
  • 片脚で踏み込みながらシャトルへ手を伸ばす
  • ジャンプ中に上半身を安定させる
  • フットワーク中に骨盤の向きを保つ
  • 打ったあとに身体の回転を止めて次の動きへ移る

といった動作が続きます。

そのため、前後の姿勢を保つ力だけでなく、回旋を使う力と、回旋を抑える力の両方が必要になります。

1. 回旋の力をショットへ伝える

スマッシュでは、腕だけを速く振ればよいわけではありません。

脚で床を押し、股関節と骨盤を回し、その動きを上半身、肩、腕、ラケットへ伝えます。

このとき、体幹が不安定だと、下半身で作った力が途中で逃げてしまいます。

例えば、骨盤だけが先に回りすぎたり、上半身が遅れて倒れたりすると、全身の力を一つの動きとして使いにくくなります。

体幹の役割は、身体を完全に動かないように固定することではありません。

必要な回旋を使いながら、下半身と上半身がばらばらにならないようにつなぐことです。

この感覚が身につくと、腕だけに頼るよりも、全身を使ってショットを打ちやすくなります。

2. 必要以上の回旋を抑える

回旋はショットの威力を生み出しますが、回りすぎると精度を落とします。

強く打とうとして身体が大きく回りすぎると、

  • ラケット面が安定しない
  • ショットが左右へぶれる
  • 打ったあとに身体が流れる
  • 次の動きへの切り替えが遅れる

といった問題が起こります。

そこで必要になるのが、回旋に耐える力です。

この働きは、トレーニングでは「アンチローテーション」と呼ばれます。

アンチローテーションは、身体をまったく回さないことではありません。

外から回そうとする力が加わったときに、必要以上に骨盤や上半身が動かないようにすることです。

スマッシュのインパクト付近や、フットワークから急に止まる場面では、回旋を使うだけでなく、止める力も必要になります。

3. 動きながら姿勢を安定させる

バドミントンでは、足を速く動かせても、上半身が大きくぶれるとショットは安定しません。

前へ踏み込んだときに上半身が倒れたり、左右へ動いたときに骨盤が大きく傾いたりすると、ラケット面の向きも変わります。

反対に、脚は素早く動いていても、

  • 胸の向きが大きく乱れない
  • 骨盤が左右へ流れすぎない
  • 頭の位置が大きくぶれない
  • 打点でラケット面を安定させられる

状態を作れれば、移動中でも正確なショットを打ちやすくなります。

バドミントンで使う体幹は、静止した姿勢を保つ力というより、手足が動いている中で身体の中心をコントロールする力と考えると分かりやすいです。

体幹が強いとは、ずっと力むことではない

体幹を安定させようとして、最初から最後までお腹へ全力で力を入れる必要はありません。

ずっと身体を固めていると、動きが遅くなり、自然な回旋も使いにくくなります。

大切なのは、力を入れるタイミングです。

  • 構えているときは、すぐ動ける程度に力を抜く
  • スイングでは、必要な回旋を使う
  • インパクト付近では、力が逃げないように安定させる
  • 着地や踏み込みでは、身体が流れないように支える
  • 打ったあとは、次の動きへ移れるように力を抜く

体幹は、ただ固めるのではなく、動かす場面と止める場面を切り替えて使います。

具体的なトレーニング方法

トレーニング1:短時間で強く行うプランク

一般的なプランクは、長い時間姿勢を保つ方法で行われることがあります。

それとは別に、短い時間で全身に強く力を入れる方法もあります。

やり方

  1. うつ伏せになり、両肘とつま先で身体を支える
  2. 肩の真下か、少し前に肘を置く
  3. 頭からかかとまでを一直線にする
  4. 肘を足の方向へ引くように床を押す
  5. つま先は肘の方向へ引くように力を入れる
  6. 実際には身体を動かさず、その場で強く力を出す

お腹だけでなく、お尻や背中にも力を入れます。

身体を動かさずに、両端から身体を中央へ縮めるような意識を持つと、短い時間でも強い負荷を感じやすくなります。

最初は10秒程度から始め、姿勢を崩さず行える範囲で続けます。

長時間耐えることよりも、正しい姿勢で全身を使えているかを優先します。

タオルを使う方法

肘の下にタオルを置き、肘を足の方向へ引くように力を入れる方法もあります。

床が滑りやすい場合は、肘が実際に動かないよう注意してください。

相手にタオルを引いてもらう方法もありますが、急に強く引かれると姿勢が崩れます。力加減を調整できる場合だけ、発展的な練習として行います。

トレーニング2:サイドプランク

サイドプランクでは、身体が横へ倒れないように支えます。

バドミントンでは、片脚で踏み込んだときや左右へ大きく動いたときに、骨盤や上半身が横へ流れやすくなります。

そのため、身体の横側を安定させる力も必要です。

やり方

  1. 横向きになり、下側の肘を肩の真下へ置く
  2. 脚を伸ばし、足と肘で身体を支える
  3. 頭から足までを一直線にする
  4. 腰が床へ落ちないように保つ
  5. 胸や骨盤が前後へ回らないようにする

下側の肩だけで耐えず、脇腹やお尻も使って身体全体を持ち上げます。

難しい場合は、膝を曲げて床につけた状態から始めても構いません。

トレーニング3:パロフプレス

パロフプレスは、チューブに身体を回されないように耐えるトレーニングです。

回旋を抑える力を鍛えやすいため、バドミントンの体幹トレーニングとして取り入れやすい方法です。

準備

丈夫な柱などに、トレーニングチューブを胸の高さで固定します。

固定が外れると危険なので、安定した場所を使います。

やり方

  1. チューブを固定した場所に対して横向きに立つ
  2. 両手でチューブを持ち、胸の前で構える
  3. 足を肩幅程度に開き、膝を軽く曲げる
  4. 胸と骨盤を正面へ向ける
  5. 両手をゆっくり正面へ伸ばす
  6. チューブに引かれて身体が回らないように耐える
  7. ゆっくり胸の前へ戻す

腕を伸ばすほど、身体を回そうとする力が大きくなります。

強いチューブを使うよりも、骨盤と胸の向きを保てる負荷を選びます。

意識すること

  • 腰を反らさない
  • 肩をすくめない
  • チューブ側へ身体を傾けない
  • 胸と骨盤を同じ方向へ向ける
  • 腕の力だけで押さえ込まない

左右の向きを変えて、両方向を行います。

トレーニング4:ショルダータップ

パロフプレスを行う器具や場所がない場合は、ショルダータップが取り組みやすい方法です。

腕立て伏せの姿勢で片手を床から離すと、身体は左右へ回ろうとします。その回旋を抑えながら肩へ触れます。

やり方

  1. 腕立て伏せの姿勢を取る
  2. 足幅を肩幅より少し広くする
  3. 右手を床から離し、左肩へ触れる
  4. 骨盤を左右へ回さず、右手を床へ戻す
  5. 左右交互に繰り返す

速く行うよりも、身体が回らないようにゆっくり行います。

足幅を狭くすると難しくなり、広くすると安定しやすくなります。

トレーニング5:腕立て姿勢で身体をひねる

腕立て伏せの姿勢から片手を反対側の脇の下へ通し、身体をひねって戻す方法もあります。

この運動は、回旋を完全に止めるトレーニングというより、身体を回旋させながらコントロールする練習です。

やり方

  1. 腕立て伏せの姿勢を取る
  2. 右手を床から離す
  3. 右手を左の脇の下へ通し、上半身を左へひねる
  4. ゆっくり元の姿勢へ戻す
  5. 反対側も同じように行う

勢いだけでひねらず、骨盤や上半身がどのように動いているかを感じながら行います。

ショルダータップが「回らないように耐える練習」だとすると、この運動は「回旋をコントロールする練習」と考えられます。

トレーニングを競技動作へつなげる

プランクやパロフプレスができるようになっても、それだけでスマッシュやフットワークが安定するとは限りません。

体幹トレーニングで覚えた感覚を、実際の動作へつなげる必要があります。

トレーニングのあとに、次のような動きを行います。

  • スマッシュの素振り
  • 片脚で踏み込んで静止する
  • フットワークからショットの形を作る
  • ジャンプして着地したあとに姿勢を保つ
  • 前後左右へ動いても胸と骨盤がぶれないか確認する

例えば、パロフプレスのあとにスマッシュの素振りを行い、身体を回したあとに上半身が流れすぎないかを確認します。

サイドプランクのあとには、片脚で踏み込んだ姿勢を作り、骨盤が横へ落ちないかを見ます。

体幹トレーニングと実際の動きを別々に考えず、最後に競技動作へつなげることが大切です。

まとめ

バドミントンで必要な体幹は、プランクの姿勢を長く保つ力だけではありません。

必要なのは、

  • 下半身で生まれた回旋を上半身とラケットへ伝える力
  • 身体が必要以上に回ることを抑える力
  • 手足を動かしながら上半身と骨盤を安定させる力

です。

体幹は、ずっと固め続けるものでもありません。

スマッシュでは必要な回旋を使い、インパクトでは力を逃がさないように安定させます。フットワークでは脚を素早く動かしながら、打点で身体がぶれないように支えます。

プランク、サイドプランク、パロフプレス、ショルダータップなどは、そのための基本的なトレーニングになります。

ただし、最後は必ず素振りやフットワークなどの競技動作へつなげます。

動きながら身体の中心をコントロールできることが、バドミントンにおける体幹の強さです。